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fairy's track第十四話


 メロンソーダとメロンクリームソーダの違いについて。私はクリームソーダのほうが好きです。

 Prologue
 第一話
 第二話
 第三話
 第四話
 第五話
 第六話
 第七話
 第八話
 第九話
 第十話
 第十一話
 第十二話
 第十三話

 本文は続きを読むから。


   ◇



 ブランの朝はとくに早いというわけではない。しかし、ほぼ毎日のようにココロを起こしてから学校に行くので、直接学校に向かうよりはそれなりの余裕が必要になる。ココロがすぐに起きてすぐに準備するのならいいのだが、なんといってもココロは寝まくるのだ。寝起きが特別悪いというわけではない。ただし、起こしても寝る。一瞬のうちに二度寝をすることもそうめずらしくない。三秒経てばほぼ寝入っている。それはそもそも起きているのか、という疑問もあるのだが、いちおう起きてはいるようなのだ。ココロも起きていたことを覚えているので間違いではないのだろう。
 今日も、ココロをたたき起こして、二度寝したココロをふたたびたたき起こして、三度寝したココロをさらにたたき起こして――そんな普通の朝、そうなるはずだった。

「ココ……んなっ――!」

 いつものように家へ勝手に入り、冷蔵庫に転がっているメロンソーダを勝手に飲み、一息ついてからココロがかぶっている掛け布団を引っぺがすと、そこには見たことのない女の子がいた。幼さを感じさせる小柄な細い身体で、薄い青紫の長い髪を不健康には見えない程度の白い肌に重ねている、一見してそれとわかるほどかわいらしい少女だった。整った眉をしかめて苦しそうな顔で寝入っている。隣にはココロがいた。見慣れない女の子にひっしりと抱きついてやすらかな寝息を立てている。
 驚愕がブランを支配した。誘拐という単語が脳裏をかすめる。いや、しかし、なぜいっしょに寝ているのだろう。いやいや、そんなことはどうでもいい。どうでもよくないけど、どうでもいいのだ。

「ちょ、ちょっとココロ――ココロ!」

 ココロの両肩をつかみ、がしがしがしと思いきり揺らす。案の定起きない。肩を解放し、今度はココロの頭をつかんで左右に揺らす。

「コォォコーーーーロォォォッーーー!!」
「ふしゅうぅ……ふしゅううぅぅ……」
「くっ、この子はいつもいつものんきな顔をして!」

 ココロが鈍い寝息で返事をした。しかし、ココロに起きた変化はせいぜいそれぐらいで、こんな状況でもココロは顔色一つ変えない。どうにも腹が立つ。
 メロンソーダを囮にするしかないか、と考えココロから手を離すと、ココロの横にいた少女が一瞬身じろぎし、その直後目をこすりながら起き上がろうとした。が、ココロの手が引っかかって上手く起き上がれなかったようだ。そのことに気づき、少女は勢いよく身体をひねらせてココロを振り払った。ココロの腕はそのままベッドに倒れたが、ココロ本人はやはりまるで起きる様子がない。
 一連の様子をその場で立ったまま見ていたブランだったが、目を覚ました少女とバッチリ視線がぶつかった。口を結んで、少女の動向を見守る。

「……」
「……」

 言葉はない。こちらを認識してはいるようだが、それだけのようだ。仕方なくブランは少女に向けて話しかけた。できるだけ優しい声で。

「あなたは、どちらさま?」
「そういうおまえはなんなのね」
「……」

 おさえろ、おさえろと自分に言い聞かせる。普通に接すればいいのだ。ココロといっしょに寝ているのを見てしまったせいか、威圧感が消しきれなかったのが自分でもわかる。左手で自分の左頬に一瞬だけ軽く触れて、表情を和らげるように意識する。

「私はその子の友人で、スシェブランルムグウェリズと言うの。フルネームは長いから、ブランでいいわ」
「すしぇ……? それほんとうのなまえなのね?」
「……どういう意味?」
「よくわからないのね。こっちじゃルールがちがうのね」

 女の子が視線を落としてぶつぶつとつぶやく。初対面の相手にこの態度だ。ただの子供かと思ったが、どうも気むずかしいタイプのようだとあたりをつける。そう考えていると、ブランにいつもの平静さがもどってくる。

「それで、もう一度訊ねてもいいかしら。あなたはなんていうお名前なの」
「メフィは、メフィなのね」

 強い目だと思った。視線を戻して、ブランをはっきり真正面から見据えるその少女の目は、おおよそ子供のそれとは似つかわしくない意志の強さを宿しているように見えた。

「そう、メフィさん。あなたはこの子の知り合いのようだけれど、お家に帰らなくてもいいのかしら。親御さんはここに泊まったことをご存じなの?」

 それはとくに深い意味を与えて訊ねた質問ではなかった。むろん、ココロが勝手にこの少女を連れて帰って、しかも保護者に連絡のひとつもしていないというのならそれは大問題であり、その場合ブランは即刻問題の解決に奔走しなければならない。しかし、比重としては、ただの前置きとも言うべき話題の提供のつもりだった。
 ブランのそんな思惑とは裏腹に、少女は深刻そうな、そしてどこか哀愁をおびた表情を見せた。その感情が描かれるさまは幼い顔つきにはひどくミスマッチで、ブランは戸惑わずにはいられなかった。

「かえるほうほうはこれからさがすのね。あんたにはかんけいないのね」
「……迷子、ということ? そういうことなら力になれると思うわよ。私は妖精界にある住居の位置なら、すぐに把握できるから」

 妖精界において、特定の住居を調べるだけなら、数日ほどあれば誰にでもできる。しかし、それをごく短時間でかつ正確に行えるのは、それこそ特殊な環境下、一定の権限をもつ者にしかできない。そして、妖精界の女王の娘であるブランはそれが可能な立場にある。
 しかし、ブランの提案に少女は首を振る。

「このようせいかいじゃないのね。メフィはべつのようせいかいからきたのね」

 言葉の意味を解するのに、一瞬、時間を要した。べつの妖精界。多くの普通の妖精なら軽く笑って否定するか、戸惑って首をかしげるであろう、べつの妖精界という単語。しかし、ブランは少女の言葉を真剣に捉えた。
 妖精界は遍在する――それは一つの理論として議論の俎上に幾度か打ち上げられている。ブランもそういった場に出席し、自らの考察を深めているが、他の妖精界が存在することについてブランはこれまで懐疑的だった。

 しかし、いま目の前に、べつの妖精界から来たと言う少女がいる。

 もちろん嘘の可能性はある。そして、べつの妖精界なのだと少女が勘違いしている可能性もある。正誤はどうでも良かった。妖精界が遍在するというのが正しいのだとしても、ブランはなにも困らない。なによりも心配で、不安を感じさせるのは、べつの妖精界から来たという少女がいままさにココロの隣にいたことだった。その事実を把握して、目眩に襲われたような気がした。気がしただけで、実際はまるでなにも起こっていない。そのことが余計にブランの気を重くした。



「がっこうというのはなんなのね」
「あのねー、友達がたくさんいるところだよ。勉強したり遊んだりするの」
「まあ、間違ってはいないけど。メインは勉強よ」
「なにをべんきょうするのね」
「え、ええ? なんだろう……なんか、いろいろ」
「あんたという子は……。そうね、私たちが通うブログ妖精学校は、基本的なところだと情報の収集やデータの取り扱い、外部通信へのアクセス方法、セキュリティを学習しているわ」
「なんなのね? そんなことべんきょうするひつようないのね。ほんをみたらわかることなのね」
「確かにね。ただ、二年以降はそれぞれ専攻する学科にわかれて実践を交えつつ授業を進めるということになるから、基礎をわかっていない人があまり多かったら授業にならないのよ。だから一度に大勢の生徒を指導する学校という場では、段階として必要なの」
「えぇー、教科書読んでもわかんないよぉ。ココロ授業受けててもいつもぜんぜんわかんないもん」
「それはあんたがバカだから」
「ただのバカなのね」
「ひどいっ。二人してバカバカ言わなくてもいいのに! まるでココロが本当にバカみたいだよ!」

 ココロたちはメフィーエドルを交えて登校することにした。しかし、登校とは言うものの、いま現在遅刻のまっただ中だった。
 起床したココロは、まずブランにメフィーエドルのことを説明しなければならなかった。というのも、気がついたときには無言のブランとメフィーエドルが自分を挟んでいる形になっていて、なんともイヤーな空気が漂っていたのだ。ココロは目に見えない圧力に促されるままメフィーエドルのことをブランに話した。

 そして、いまこの時間だ。
 なんだかんだでココロは遅刻をしたことがない。それというのもすべて毎日起こしに来てくれるブランのおかげだ。
 遅刻。おそらく待っているのは担任のフィールから与えられる課題の山だろう。これまでにいくらかのクラスメートがそんな罰を与えられるシーンを目にしてきた。ブランは課題を与えられる程度ならなにも問題ないかもしれないが、ココロにとってフィールが提示する課題の山は恐怖の対象に他ならない。いまから気が重くなってくる。

「フィール先生、遅刻見のがしてくれないかなあ」
「無理でしょ。あの勉強大好き妖精が、生徒をこき使うためにこれほど適当な口実を見のがすわけないわ」
「なにさせられるんだろう……。スーちゃん、助けてね」
「イヤよ」
「うぅ……」


 学校に着き、ココロたちは直接教室にはいかず図書室にメフィーエドルを置いてから教室に向かった。教室では老教師により歴史の授業が行われていた。遅刻の断りを入れると、男性老教師はココロたちをとがめるわけでもなく、席に着くようにうながした。
 授業時間は残りわずかだった。相変わらず、歴史の授業を行うこの老教師は眠気を誘う声音で、腕や教科書を枕にして突っ伏している生徒がぼちぼちいる。ココロはついさっきまでばたばたしていたので、眠気に襲われることなく授業に集中することができた。

「――ティーココ暦五十年から六十年の間に、壁画妖精が途絶えており、この前後で妖精界初の公的情報管理の場として通信局が設立されました。あー……通信局はその後、情報の管理や収集作業を行うようになり、えー……これが現在でいうデータベースセンターの前身になりました。壁画妖精の……あー、失踪には諸説ありますが、当時妖精界の各地で起きていた流行病で絶滅したという説が有力とされています。ティリヴァ女王は通信局の設立後、えー……特殊医療班を結成し、人間界からの情報解析をもとに当時猛威をふるっていた流行病の収束に向けて尽力しました。あー……ちなみに、この流行病の名称や具体的な症状について、現在では公的資料が残っておらず、えー……経緯はよくわかっていません。ただ、民間の資料から……あー……、現在で言うところのトンネル病ではないかと推測されています。あー……話がそれました。流行病の収束後、ティリヴァ女王は国営図書館の構想を立て、医療福祉制度の充実を目指しましたが、えー……理由は定かではありませんがなんらかの原因で病床に伏せることになり、それからまもなく特殊医療班のリーダーをしていたルルキーラへと王位を継がせました。あー……ティリヴァ女王が構想した国営図書館は、ルルキーラ王の治世のもとカティ宰相によって設立、運営が実現されました。えー……ここはテストに出ますので、あー……構想と設立の時期を間違えないようにしましょう。ルルキーラは王位に就いてから――」
「ほげぇー」

 ノートを取りながら集中して聞いたものの、まるで頭に入ってこない。よくわからないけれど、とにかく女王ががんばって病気をなんとかしたらしい。それにしても、壁画妖精がみんないなくなってしまうような病気というのはなんなのだろう。現代のトンネル病というが、そもそもそんな病気は聞いたことがない。

「ねえねえ、スーちゃん」
「ん? なに」

 頬杖をついて退屈そうに教壇を眺めているブランに声を掛ける。ノートはもう取ってしまったらしい。きれいに整った文字が机の上のノートに並べられている。

「トンネル病ってなんなのかな。怖い病気?」
「怖いわよ。非常に感染力の高いウイルス性の病気ね。しかも、病気な癖して書物にまで影響を与えるらしいわ」
「本にまで? どうなるの?」
「書かれている文字がすっかり変わってしまうのよ。その変化したあとの文字はいまも研究されていて、未だ解読できていないらしいわ。変化後の文字はまったく無意味な文字の羅列とする向きもあるけど、それにしては規則性があるとかどうとか。とにかく、書物にまでそんな影響が出たものだから、それの煽りをもっとも強く受けて滅んでしまったのが壁画妖精なのかもしれない、という話」
「本がダメになったらなんで壁画妖精に影響がでるの?」
「壁画妖精は読み書きで生命力を得ていたからね。あらゆる文字を使いこなせて読んだ文書を書き出すこともできたようだから、壁画妖精はデータベースの守人なんて呼ばれ方をしていた妖精だけど、それが仇になったわけね。トンネル病の症状のひとつとして、言語認識の著しい欠損があるの。単語は理解できても文章が読めなくなったり、ヒドいのになると言語がまるで理解できなくなったりとか」
「あわわわ……」
「それ以外にも身体の一部がぜんぜん動かせなくなったり、免疫力が落ちて他の危険な病気を引き起こしたり……」
「そんな怖い病気があるなんて……ココロもかかったりしない?」
「あんたね、もしそんな病気が今も猛威を――ああ、うん、そりゃ罹ることもあるでしょうね。あれ……ココロ、あなた……その湿疹はまさか……」
「うきゅぁー!」

 バッターン!
 ココロが思わず飛びずさると足に椅子が引っかかって思いきり倒してしまった。なんとかココロ自身は転けずにすんだので、あわてて周りを確認しようとしたら、ちょうど授業終了のチャイムが鳴った。眠り込んでいた生徒の何人かがのっそりと顔を起こす姿が視界の端々に映る。老教師はチャイムが鳴り終わらぬうちに次回の授業のことについて二言三言触れ、教室を後にした。

「バカねえ」

 ココロが椅子を引っ張り起こして座り直すと、ブランがにやりと笑う。

「ヒドいッ! スーちゃん、また嘘ついたね!?」
「わたしがいつ嘘だと言ったの。本当かもしれないじゃない」
「ココロのお肌はすべすべだもん! シッシンとかないし!」
「じゃあ、わたしの見間違えね。うっかりだわーうっかりしてたわー」
「見間違え……ほんとうに? 見間違えならしかたない……のかな」
「わたしがココロに嘘をつくと思う?」
「すごく思う」
「そう、それは大変ね」
「うん、たいへう゛~~あ゛~~~~イダイイダイダイダイやめ~~~~てぇええ~~~」

 授業を終えてにわかに騒がしくなる教室の後方でココロがブランに痛めつけられていると、レッヴェスが二人のもとへ寄ってきた。

「どうしたの? 遅刻なんてしちゃって」
「この子がちょっとね」
「うー……なんでもかんでもココロのせい……」

 ブランの魔手から解放された頭をぶるぶると振りまわして感覚を取りもどす。はやく図書室に行かなければならない。メフィーエドルが待っている――かどうかはわからないが、一人にしておくわけにはいかないだろう。レッヴェスとの会話をそこそこに切り上げ、休みの憩いを求めて教室を後にするクラスメートたちの背中を追った。

 図書室に着いたココロがメフィーエドルを見つけるまでには、それほどの時間を必要としなかった。扉を抜けてすぐに、不自然にうずたかく積み上げられた本がとある机の上に塔を作っていることに気づいた。メフィーエドルはその塔の麓で本と向かいあっていた。ココロがメフィーエドルの姿を見つけたとき、図書室に訪れていた生徒のいくらかが遠巻きにメフィーエドルへと注目している様子がうかがえた。本の塔そのものもさることながら、それを作りあげたメフィーエドルが気になっているようだ。
 ココロはそんな視線を意識して、こそこそとできるだけ目立たないようにメフィーエドルの隣の椅子に落ち着いた。間近で見ると、本でできあがった塔はその一冊一冊がとてもぶ厚いため、異様な威圧感があった。本のタイトルを見ても、いままでどころかこれからもココロにはまったく縁のなさそうなものばかりだ。

「フィーちゃんフィーちゃん」

 ココロには目もくれず本を読み続けるメフィーエドルに声をひそめて呼びかける。無視されるかと思ったが、意外にも即座に返事があった。

「なんなのね」
「朝ごはん食べてないから、お腹空いたよね。スーちゃんが買ってきてくれるから中庭に行こ」
「おなかなんてすいてないのね。ひとりでいってこいなのね」
「ダメダメ、朝ごはんは元気の源なんだから。もういまの時間だと朝昼ごはんだけど」
「メフィはげんきなんていらないのね。だからみなもともいらないのね」
「もうっ、そんなのダメだよ。元気がなくなっちゃうと遊べないし、遊んでても楽しくないんだよ」
「なんでメフィがあそばなくちゃならないのね。メフィはあんたとちがってあそぶよりほんをよんでたほうがいいのね」
「ココロがフィーちゃんと遊びたいの。学校終わったら遊びに行くの」
「そんなのよけいにしったこっちゃないのね。あんただまってるのね」
「いいからいいから。ココロを信じて!」
「すこしはひとのはなしをきけなのね」

 最初は小声のつもりだったが実りのない押し問答をつづけているうちにだんだんと声が大きくなってしまっていた。なおもメフィーエドルを説得しようとしていたココロの肩がぽんぽんと叩かれる。

「図書室では……しずかに」

 図書委員の受付をやっている女の子だった。唇にひとさし指をあてがってココロとメフィーエドルを一度ずつ交互に視線を投げた。ココロが口元をおさえあわてて頭を下げると、女の子はちいさく頷いて受付へと戻っていった。
 ココロはメフィーエドルをどう動かそうかと悩んだ。また話しかけたところで会話がループすることになりかねないし、また話し声が大きくなったりしたら今度はすごく怒られるかもしれない。どうしようかと腕を組んでうーんと頭を働かせていると、横に座っていたメフィーエドルがふいにため息をついて立ちあがった。

「きゅうけいするのね。とっととあんないするのね」
「え、うん。もういいの?」
「うるさいのね、このパーチクリン。とっととしろなのね。」
「ぱーち……え?」

 聞き慣れない形容っぽいなにかをぐるぐると頭の中でまわしながら、メフィーエドルにつづいて図書室を後にした。
 まだお昼には早い休み時間なので中庭にほとんど人はいなかった。中庭の片隅に立てられている時計台の中腹には真鍮の大きなベルが悠然とたたずんでいる。このベルの仕事はお昼休みの開始時と終了時、そして学校のクラブ活動が終わる時、一日に三度だけだ。ココロはどうもこのベルの音が苦手で、音が鳴りだしたときはついつい耳をふさいでしまう。
 ブランは中央の噴水近くにある木のテーブルで本を読んでいた。メフィーエドルの手を引いて駆け寄ると、ブランは顔をあげてココロたちに食事を促した。テーブルのうえには菓子パンとメロンソーダが用意されていた。

「スーちゃんありがとねー。じゃあ、いっただきまーす」
「待ちなさい。ココロはこっちよ」
「えっ?」

『ココロちゃんへ。すぐに職員室へ来るように♪ “ブログ妖精学校が誇る稀代の天才”が代名詞のとっても偉い先生フィールより』

「えっ? あれ? えっ」
「メロンソーダはわたしがおいしくいただいておくわ。さよならココロ、元気でね」
「えっ」


 職員室で待っていたのは満面の笑みのフィールだった。

「遅刻してきた生徒であるココロちゃんには他の生徒に示しがつくように、ひっじょーーーに残念ながら罰を科さなければいけません。はい、課題はぜんぶこのプリントに書いてあるからね。きっちりまとめてきてね」
「う~~~あ~~~~」
「期限は五日後。ペブットの森の管理人さんには話を通してるからね。それから、あそこには今、この学校から研修の――えーと誰だっけ」

 フィールが言葉を探すように、わきに直立していた助手のエベリスへと視線を向ける。

「セキュリティ科のトライフェです、フィール先生」
「そう、そのトライフェがいるらしいから、セキュリティによる対策が必要な事態が起きた場合には、すみやかにその生徒へ報告するようにね」

 渡されたプリントにはペブットの森についていくつかの現地調査をするように書かれている。水質調査、木花の状況調査、生態系調査など。とてもココロの能力で処理しきれるようなものだと思えなかった。

「あのー、フィールせんせー……これもう少し簡単なものに……」
「ダーメ。ココロちゃんのわかる範囲でいいから、しっかり調べてね」

 がっくりと肩が落ちる思いで、ココロは職員室を後にしなければならなかった。


  つづく
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