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デュシャンは語る

デュシャンは語る
マルセル・デュシャン
聞き手:ピエール・カバンヌ
訳:岩佐鉄男・小林康夫
出版:ちくま学芸文庫
ジャンル:インタヴュー


 マルセル・デュシャンのことをまったく知らなかった私が、ジョン・ケージの名前につられて興味本位で手にしたインタヴューまとめ本。結局マルセル・デュシャンってどういう人なの、と疑問が最後まで残る本でもあります。エキセントリックの仮面をかぶった、最高にノーマルな人間で芸術家っぽい、謎の人物。インタヴューの中で「私は最高度にノーマルな人間だ!」を本当に言ってるから困る。

 さて、デュシャンのことをまったく知らず、しかもいまだに彼の作品というものを見ることすらないまま、こうしてこのインタヴュー本についてなにやら書き始めた理由は単純、この本がこれそのもので十分に楽しめるからです。エンターテイメントとしてから、さらにもうひとつ踏み込んだところで。デュシャンという人となりがこの本を読んでわかるかどうかは人によりますが、このインタヴューを読めばデュシャンの軌跡というものが見えてくるのは間違いありません。二つの大戦の傍らで彼がどういった生活を送ってきたか、どんな交流を経てきたか、彼の知人・友人はどう過ごしたか――インタビュワーもずいぶん癖が強いですが、このデュシャンという生き方は読者に、あるいは読者たちが営むであろう生活に対して、いたって痛烈で濁りのない反射板の存在を思い起こさせてくれるでしょう。それほど普通で、底知れない常識がうかがえます。そう、デュシャンは私たちにとっての普通を疑わせるほど、あまりに普通すぎるのです。
 『誰かに起こりえたことは誰にでも起こりうることである』。彼がインタヴューの最後で述べる「七十九歳のすべての人を襲う身体の不調を経験しただけなのですよ」は彼のインタヴューに触れた読者に、正しくそれを体現してみせました、あくまで自然の成り行きで。


 話は終始、芸術家やその周りで起きたことに尽きますが、話している内容は非日常とは程遠く、それでいて芸術家らしい思想や立ち位置からは離れることがないので、芸術を通しての、在り来りな日常というものが見えてきます。これはデュシャンという物語を読む本だ、と言い換えてもいいです。退屈で刺激的な物語、魅力的なものです。


 ところで、この本、読むのに何ヶ月か掛かりました。いやー、いつ読み出したか覚えていないんですけど、がっつり読むということをせず、空いた時間でたらたらと読んでいたからなんですが、いやはやこれほど長く時間をかけておきながら放り出さなかったのは久しぶりです。私は飽きっぽいので途中で駄目だと思ったらすぐに読むのを止めるんですけどね。なので、一気に読み切る勢いをなしに最後まで目を通すというのは珍しい。
 まあ、かといって、特段面白いというわけでもなかったんですが。面白いというわけではないんですけど、魅力があるんですよ。なかなか不思議な本でした。
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