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fairy's track 第十話

 さぽているもいいですけど、ココロはココロでやっぱり良い。
 まあロリキャラならなんでもいいんですけどね。容姿的な意味で。

 Prologue
 第一話
 第二話
 第三話
 第四話
 第五話
 第六話
 第七話
 第八話
 第九話


 第十話は続きを読むから!




/fairy's track 第十話/



「ど、どどどどど、どどら、どら、どら」

 腰がふにゃりと砕ける。ココロはへたり込んだ。のどが詰まる。ドラゴンという言葉が口にできない。口にする必要はないだろう。しかし、ココロの頭の中はドラゴンという四文字が延々とリピートされていた。他になにも浮かばなかった。
 大きな赤い瞳がココロを見据えている。ココロは指をドラゴンに向けたまま動けない。
 のっそりとドラゴンが顔を上げる。つられて、ココロは目線でドラゴンを追う。ドラゴンはココロを見下ろしていた。とてつもなく巨大なドラゴンだった。妖精の泉で時折見かける野生のドラゴンよりも何倍も大きく見える。実際、ココロを丸呑みに出来そうなほど大きな口だった。その口がもそもそと動く。ココロははっと身構えた。

「珍しい妖精だな。ドラゴンも見たことがないか」
「どどどどどららら……え? しゃ、しゃ、しゃ、しゃべってるーーーーーーーーッ!?」
「ほう。にぎやかな子供だ」

 頭を抱えてうずくまる。

「食べないでー! もう材料にしたりしないからっ!」

 ココロは力の限り叫んだ。目を閉じても圧倒的な威圧感が目と鼻の先にあるのが理解できる。恐怖だけで死んでしまいそうだった。
 しかし、突然、その空気が和らぐ。瞬間、すぐ目の前で探し求めていた声が鳴った。

「あら、ずいぶん大きな家主さんですね。勝手ながらお邪魔させていただいています」

 ココロはおそるおそる顔を上げた。大きなドラゴンとココロの間にピアが浮いている。

「ぴ……ピアさん、ピアさんっ! よかったぁ」
「ココロちゃん、一階には戻ったの?」
「行けないですよっ。ピアさんと一緒に帰らないとって思って……」
「そう、悪いことしちゃったかしら」

 肩越しにピアが困った顔で笑う。ココロはそれを見てやっと安堵の息をついた。

「ふむ。たった数月の間にこうも易々と二度目の訪問者を迎え入れることになろうとは。アレもずいぶん人恋しい思いをしているのだと見える」

 ドラゴンが興味深げにココロたちを見てきた。思わず、ココロはピアの背中目がけて走り寄る。ピアの服を掴み、陰からドラゴンを盗み見る。

「わたしたちはただ立ち寄っただけです。お気に掛けてもらわずとも結構ですよ。少々、こちらに留まらせてもらうかもしれませんが」

 ピアがドラゴンに向かって言った。ドラゴンが羽を小さく羽ばたかせる。風切り音が鳴り、風が巻き起こった。ココロの目の前でピアの長い髪が舞い上がる。

「そうは言ってもな。我にも矜持がある。お前たちを追い返さねばなるまい。お前ならわかろう、古き血の子よ」

 ピアが微笑んだまま頬に手をあてがって答えた。

「お仕事を全うされようという考えは素晴らしいものだと思います。ですが、年老いたドラゴンに遅れを取るほど、わたしは未熟ではありませんよ」
「ほお。代を経て小さくなったのは図体だけか」
「無謀な振る舞いはお止めになるよう忠言さしあげているだけですわ。それに、ここにある貴重な書物を灰にしたくもありませんから」

 ココロはピアとドラゴンの会話を理解できなかったが、なんとなくピアの笑顔が優しいだけのものでないことを感じ、ピアの服を掴んでいた手を少しゆるめた。このままここにいるのはとても危ない気がする。

「ふん。書物はいずれ塵に帰ろう。知を欲するならばその短き生、大地の声に耳を傾けるが良かろう。……しかし、ふむ」

 ドラゴンの視線が向けられたのがわかった。ココロは聞き耳を立てる為に乗りだしていた身をサッと隠す。ピアの後ろからドラゴンをおそるおそる見上げた。

「なにかご用でも?」

 ピアが落ち着いた声で言った。

「この下に小部屋がある。中の様子を見てきてくれんかの」
「下?」

 ココロは身を乗りだして下をのぞき込む。本棚の背が高い上に、ドラゴンが落とす影のせいで下のほうはよく見えない。一応、降りることができそうなぐらいの高さではあるようだ。
 隣でいっしょに下を見ていたピアがドラゴンに向き直った。

「なにがあるんです?」
「危険なものではない。なに、見てくるだけで良い。帰ってきたら思う存分ここを使うがいい。そのときは咎めはせん。ただし、行くならそこの妖精も連れての」

 ドラゴンから名指しを受け、ココロは目を丸くした。

「え? コ……ココロですか?」
「そうじゃ。頼んだぞ」
「ココロちゃんといっしょに見てくるだけでいいんですね。それぐらいならお安いご用です。ココロちゃん、掴まって」
「は、はい!」

 ピアに促され、ココロはがしっとピアにしがみついた。ふっと身体が浮く。数瞬後、ココロは床に着地していた。

「その部屋はどちらに?」

 ピアが上空を見上げる。

「棚に沿ってまっすぐ歩くがよい。どこからでも行き着くようになっておる」
「それはまた、親切な作りですね」

 ドラゴンの答えを聞くなり、ピアは歩き出した。ココロは遅れないようにピアの背中を追った。
 本棚に沿って歩いていく。しかし、ココロの目は前にも足下にも向かっていない。ココロの目はすっかり本棚に奪われていた。上の階で見るような本とは雰囲気がぜんぜん違う。色彩に乏しい本ばかりで、表紙の字でさえよくわからないものが多い。たまに読めるものがあっても『壁画図鑑』『スパム言語・序説』など内容が想像できないような本しかない。本棚だと言われないと、ただの壁の模様だと勘違いしてしまいそうな地味さだった。

「ずいぶん古い本が多いみたいね」

 ココロのせわしない動きに気付いたのだろう、ココロの前を歩いていたピアが本棚に目を向けながら言った。

「古いって?」
「言葉ですよ。いまは使ってない言語がたくさんあるみたい」
「へー。……あれ? ピアさん、もしかしてわかるんですか?」
「読むぶんなら。少しだけですけどね」
「少しでもすごいですよぉ。ココロ、ただの模様かと思ってました。でも、どうしてこんな本ばっかりなんだろ」
「さあ……。まさかドラゴンが書物を読むわけではないでしょうし。他に誰かいるのかもしれませんね」

 まもなく二人は突き当たりにたどり着いた。取っ手のないアーチ型の扉があった。ピアの背よりも少し高いぐらいの高さしかない扉は、どうやら石で出来ているようで、その頑丈そうな佇まいは妙な威圧感をもっている。模様には凝っておらず、壁と調和していた。もし明かりが無かったら壁と扉の区別がつかないだろう。ピアが躊躇うことなく手を伸ばし、扉を押し込む。ココロはそんなピアの姿を見て思わず首を傾げた。ついさっき入った部屋の扉とよく似ている。ピアの動きと先ほどのココロ自身の姿が重なる。
 しかし、ココロの既視感はそこまでだった。二人を迎えたのは水の音でも緑色の光でもなかった。
 扉の先は透明感を持った石壁に囲まれた小さな部屋だった。左右の壁に掛けられた手のひらに納まるほどのランプの光だけが部屋を照らしている。奥に机と椅子が一組。ココロ達と向かい合うように置かれている。部屋の中には誰もいない。

「本当になにもないみたいね」

 ピアの声が部屋の中を反射し、多重の音となって返ってきた。ココロが部屋の前で足を止めていると、ピアは奥にずんずんと入っていき、さっと全体を見回す。やがてピアは机にあった本のようなものを手に取りめくり始めた。ココロはピアとは正反対におそるおそる部屋へと足を踏み入れる。

「『……生息地が拡大している。すでに上層の階にまで彼らを散見するようになった。近く、ここからも生きた言葉たちが失われるだろう。私も脱出を考えたほうがいいのかもしれない。しかし、泉によって隔離されたここですらこの有様だ。外に安全な場所が残っていればいいのだが……』」
「ピアさん?」
「日記みたいね。これも古い文字……にしては筆跡が新しいような気がするけど」
「やっぱりここに誰かいたんですね。どこいったんだろ」

 ココロはピアに寄り添うようにして日記らしき本をのぞき込んだ。得体の知れない線がうねうねと連なっている。どうしても文字には見えないそれに目を凝らす。
 ピチャン、と音がした。目の前で本に水が融ける。透明な緑色の水がココロの視界に波紋を描いていく。言葉を出そうとして、ココロは音を失った。その瞬間、声の出し方がわからなくなっていた。ココロの中から水が弾け、意識が拡散する。
 光が満ちた。





「ああぁああぁぁぁあああ! うっとうしーのね! そこなようせいもどき! ネフテーじるしのスパムコロリでおそうじされたくなかったらかいだんのはしっこで『くれくれ』いってたらいーのね! でもぱすわーどはじぶんでしらべてこい! なのね!」

 メフィは本棚から手当たり次第に本を抜き取って通路に向かって投げつける。いくつかの本は通路でふよふよと浮かんでいる黒い羽をもった生き物に当たった。しかし、生き物は本の衝撃など意に介すことなく、ふよふよと通路にのさばっている。

「きぃーーっ! きぃーーーーーーっっ!」

 メフィは奇声をあげながら怒りにまかせて本を次々に投げつける。黒い羽で浮かぶ生き物たちはメフィに見向きもしない。
 メフィは気づかなかった。メフィの頭上からなにかが降ってきていることに。
 本棚から手に取れる本がなくなり、メフィは新たな武器を求めて本棚へと振り返る。そして、メフィは頭上から振ってきたものに潰された。

「むぎゃ!」

 メフィを下敷きにしたものは、メフィの上に座ったまま頭を振った。呆けたように周りを見る。

「はれ……? ピアさん?」

 頭上で響く声に反応し、下敷きにされていたメフィはくわっと目を開いて勢いよく立ち上がった。

「ぬりゃぁああああ!」
「わ!? わあっ!」

 メフィを下敷きにしていたものが悲鳴をあげて飛び上がる。メフィは上空に浮かんだそれをにらみつけた。

「こらぁぁっ! うえからなんてヒキョウなのね! ひとことこえをかけてふってくるのね!」
「え、ええッ!? ご、ごめんなさいっ」
「あやまってもゆるさないのね! ここでいきのねとめてやるのね!」

 ふたたび本を使って攻撃を始める。しかし、目標は本の届かないところにまで浮かび上がってしまった。

「とどかないのね! とどくところまでおりてくるのね! このヒキョウもの!」
「そんな無茶なぁ……って、ええっ!? なんでココロ浮いてるの!?」
「へきがようせいのいしんにかけて、このメフィがおまえをたいじしてやるのね!」

 メフィの剣幕に押されたのか、目標は逃げ出した。メフィは負けじと通路を走って追いかける。すると、目標は先ほどまで黒い羽をもった生き物がふさいでいる通路へと向かっていった。メフィはしめた、と思った。追い詰めたと思ったのだ。
 しかし、メフィの思惑はあっさり覆された。

「きゃー! たすけてー!」
「……」
「……」

 目標が近づくと、黒い羽を持った生き物たちは道を空けてしまった。

「なんなのね! でもらっきーなのね!」

 これでジーテのもとへと行ける。メフィは目標を追って下層へとつづく階段を駆け下りる。



   つづく
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