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第三話


 放置されていた第三話。ちょっと短い。

 ココロの広場で紹介されていたのでこりゃ書かねばとあわてて書きました。
 ストーリーの進展があまりないのは内緒の話。

 Prologue
 第一話
 第二話

 第三話本文は下記 more から。

   ◇ ◇ ◇

 うにょうにょと動きまわる大きな木や襲い掛かってくる枝に、他の生徒たちもだんだんと慣れてきていた。互いに友人を手にとって、それぞれの方向に逃げだし始めた。
 一方、ココロは満身創痍だった。そして、ココロはさらに足を絡まらせる。

「へぎゃッ!」

 ココロは顔面から落ちるところだったのを、なんとか腕を盾にしてみせた。盾はまたひとつ傷をきざんだ。

「いたたた……」

 転げた回数を最初から数えることは諦めていた。両手の指で足りるはずがなかったからだ。顔をかばう方法も今までの経験でばっちり学習済みだったので、いまさらいくら転ぼうが関係なかった。ブログ妖精たるもの、はたから見てわかるところに傷さえ作らなければ良いのだ。服はあとで繕えば良い。
 ココロは服のどろを落とすのもほどほどに立ち上がって、ふたたび、近くでうごめく木に向かって突進した。

「ココロトルネード!」

 ぐるんぐるんと回していたココロの手が木に当たる。ぱこん、と軽快な音を立てて木が倒れた。
 ココロは、次の目標を探そうと周りに目を向ける。すると辺りの様子がすっかり落ち着いていることに気がついた。生徒たちは大きな木から遠ざかっていたのだ。ココロは充分に時間をかせぐことができたのだ。
 何人かが、大きな木の伸ばした枝が届かない辺りから様子をうかがっているのが見えた。そこにいた女の子がおっとりした声で「ほーらー、こっちー、こっちー」とココロに手を振っていた。
 ココロは大きくうなずいて、ブランの姿を探した。

「おーい、スーちゃんやーい!」

 先ほどまでいた場所にブランの姿は見えなかった。周囲には、まだ枝が歩き回っている。しかし枝たちはブランにさんざん痛めつけられたのか、ずいぶんと不自由そうな動き方だった。あまりその姿を見ていると可哀相に思えてきたが、今はブランを探さなければならない。
 ココロはさっと視線を走らせる。
 ブランの姿を見つけるよりも先に、フィールの助手の姿が視界に飛び込んでくる。灰色に染まった大きな木の下でなにかやっているようだった。

「わわッ、助手さんあぶないですよー!」

 ついさっき大きな木に捕まったばかりのココロはそう言わずにはいられなかった。
 ココロの声とほぼ同時、大きな灰色の木は助手を遠ざけるかのように枝を激しく振り払った。しかし、助手はココロに注意を払うでもなく、大きな木が伸ばしてくる枝を難なくかわしながら、木の周りに花を落としていく。

「おーい、なにやってるんですかー! にーげーまーしょー!」

 しかし返事はない。ココロは声が聞こえなかったのかと思い、灰色の木の方――助手がいる方にむかって走り寄ろうとした。それを後ろから飛び出てきた手がとめる

「ひぃあ!」

 反射的に背後にむかって腕を振り払おうとするが、それはまた出てきた手によって受け止められた。

「なんて声出してるのよ」

 振りかえると、ブランがそこにいた。

「だ、だって……もー、スーちゃんなにしてるの。はやく逃げないと」
「……あのね、あんたが時間稼げって――まあいいわ。いくわよ」

 ブランはココロの腕をとって引っ張ろうとしてきた。

「わっ、ちょっとまって、助手さんが……」
「いいのよ、放っといて。仕事なんだから」
「仕事?」

 二人が話している間も、助手は灰色の木の周りに花を散らばらせていく。灰色の木はすっかり花に囲まれていた。

「仕事って、なにするの?」
「ああなったら、もうどうしようもないから……まあ、簡単にいえば、燃やすのよ」
「も……燃や……え、ええッ!?」

 ココロは自分の大きな声にひっくりかえってしまいそうなほど驚いた。木を燃やすなんて、考えられなかったのだ。

「で、でも、この森の木は、あのなんだっけ、妖精界だけのじゃなくて……ええと、なんだっけッ!?」
「人間界との架け橋、手紙、通信機、いろいろ呼び方はあるけど、人の心、っていうのが一般的ね」
「そう! 心だよ! ココロじゃなくて!」
「つまんないダジャレね」
「おもしろいこといったわけじゃないもん!」

 ココロは灰色の木を一度見やって、ブランに向きなおる。

「じゃあ、あの花って、火打ち花? なんで燃やすの?」
「面倒だし、家に帰ってゆっくりしながら話しておきたいことなんだけどね」
「スーちゃん!」
「わかった、わかった。わかってるわよ」

 ブランが話しだそうとしたとき、助手が火をかけた。ココロは音に気づいて木に視線を向けた。あっという間に、灰色の木は火に呑まれる。火打ち花と呼ばれる花は、非常に燃えやすくもあったのだった。
 バチバチ、バチバチ、と木が燃え落ちる音がする。周囲に散らばっていた枝たちも、まるで家に帰ろうとするかのように、灰色の木に向かって戻っていこうとしていた。
 しばらく、ココロはそれを見ていた。熱いだろうな、と。痛いだろうな、と思いながら。
 火の音にまじって、やがてブランが話しだした。

「灰色の木っていうのはね、ただの枯れ木なんだけど……伝染するのよ。放っておくと、周りの木も枯れていくの。だから、それぞれ事情を知っている人がああやって対処しているわけ。わたしも見るのは初めてだけどね」

 灰色の木は全体を火に包まれていた。助手もすでに木から大きく距離をとり、燃えるのを見守っている。ココロはそれで、この木はもう燃やし尽くされてなんにも残らなくなるんだな、と理解した。助手は死を悼むようにして木を見ていた。


「枯れ木ができるのは、詳しい理由はわからないけれど、人間界のブログによどみが生まれているからだと言われているわ。本来の役目を見失ったブログが増えるとか、その為に起こる人離れとか。細かな事情は、わたしたちにはとうてい理解できないことだけどね。ひとつだけ絶対と言えるのは、わたしたちには枯れかかった木を助ける手段がないということよ。結局、わたしたちができるのは、枯れた木を一刻でもはやく処分することだけ……ココロ?」
「スーちゃん! ココロがんばるよ! 枯れ木がみんなよみがえるようにしてみせるから!」
「ええと、それよりあんた……」
「スーちゃんも手伝ってね! ふたりでがんばろう!」
「ココロ、ちょっと自分の身体、見てみなさい!」
「え? から……なにこれーッ!?」

 ココロの身体は、まばゆい光に包まれていた。まるで太陽が宿ったかのような光に周囲は満たされていく。
 火で全身を覆われていた灰色の木まで光は伸びていき、やがて木を丸ごと呑みこんだ。
 光が大きくなっていくに連れて、ココロの意識は遠ざかっていった。夢心地の中で、ココロは灰色に木に触れた木がした。
 その瞬間、火がふっと消え、木が大きな音を立てて崩れ落ち、光はココロに戻っていった。
 灰色の木があった場所には、小さな枝木が残っただけだった。
 そして、気づくとココロはブランに抱えられていた。

「ちょっと、ココロ!」

 ブランの声が聞こえる。しかし、今はそれどころではなかった。
 身体の中に戻ってきた光にほんろうされるがまま、ココロの意識はごちゃごちゃと混乱した。
 木が見えた。人間界が見えた。花畑が見えた。メロンソーダを捜し求めて旅に出た夢が一瞬のうちに見えた。
 光がココロの中で落ち着きを取り戻したとき、ココロはひどい眠気に襲われ、眠気に負けた。


 つづく。
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