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忘れられた血統


 つい先日、チャールズ・ディケンズの『オリバー・ツイスト』を読みまして、ふとヒロインの在り方について考える時間ができました。

 『オリバー・ツイスト』では、主人公であるオリバーは孤児として扱われ、救貧院で幼少時を過ごし、十歳になった日にとある出来事から奉公に出されることになります。そこからなんやかんやとあってあちらこちらに行くことになるわけです。一言で表すなら、薄幸の少年が世間の荒波と戦いつつ自分の出生と向き合うことになる物語です。
 で、いろんな場所で出会う人々の中にオリバーと同年代のヒロインというものは存在せず、直接オリバーに対して恋愛感情を抱くヒロインというものもいないんですよね。
 オリバーを助けようとする人は人の良い老人ばかりなんですが、しかし、ストーリー上で二人の若い女性(十代後半~二十代半ば?)から目をかけられます。まあ、囲われるといったような意味ではなく、憐憫の情から親身にされるわけです。一人は犯罪グループの一員の女性、もう一人は良家のマダムの下にいるお嬢様と立場はまるで違いますが、どちらも自分の立場を度外視してこれでもかというほどオリバーに献身します。もちろん、純真無垢なショタであるオリバーもそれに対して応えるわけですが、そんな彼女達にはそれぞれパートナーとなる男性の影、というか男そのものがいます。
 「なんだよ、男持ちかよ」となりそうなところなんですが、彼女達にはそういった残念さが感じられません。というのも、そういう相手がいるということがはっきりしているのは確かに間違いないんですが、作中、彼女達のあふれんばかりの善意はオリバーに対してしか向けられていないんですよね。もっと具体的に言うと、彼女達は相手の男に対して受動的なんですよ。
 しかし、オリバーに対しては自分から能動的に力になろうとする。オリバーという魔性の少年だからこそ為せる技だといえばそれまでですが、こういった関係性(つまり恋愛が絡まない上での男女関係)の上で繰り広げられる善意のやり取りというものが、私には非常にヒロイン“らしい”ものに思えたわけです。

 それで「ヒロインとは何ぞや」と考えるに至るわけです。
 物語の主要人物である少女・女性であるというのは当然として、主人公に対してどうあればいいのか。
 まず、主人公に恋愛感情を抱いている(もしくは抱く予定)という要素は大きなものの一つですね。恋愛が主題にない作品の場合は、主人公と血縁関係にある、それだけでヒロインと呼べる場合もあります。
 作中での大きな流れに密接に関わっている女性もそうですし、主人公の後をついてくる女性もそうです。
 この辺りは、明確な形で主人公に近しい存在で、主人公以外の男の影がないことが重要視されると思います。この辺りが、主要なヒロイン、メインヒロイン群ですね。
 そこから一歩外に出てみると、物語とは直接関係はないが主人公との因縁が深い存在、立場は対立しているが心情では主人公に傾倒している存在、主人公と面識はないが、主人公の行動によって大きな影響を受けてその後の物語に関わる可能性が高い存在、などといった主人公周辺からやや外れた位置に陣取っている女性もヒロインと呼ぶに差し支えないでしょう。サブキャラにあたる位置ですね。
 これ以上外になると、主人公との関係そのものが遠すぎるのでヒロインと呼べる存在にはならないと思います。

 主人公との関係はこの程度が目安として、次にヒロインの精神的な立ち位置について。要は、主人公に対するアクションです。
 メインヒロイン(笑)などに代表される、ヒロインなのにヒロイン“らしくない”キャラと、そしてそれとは逆にサブキャラなのにメインヒロインを食ってしまうヒロインはどう違うのかというと、もうこの精神的な立ち位置に他ならないと思います。
 精神的な位置というものは、わかりやすいところで言うと、幼馴染みなどに付きやすい属性である世話焼きキャラ、もしくは世話焼かれキャラというような、主人公の日常生活に密接に関係しているキャラが近い部類の代表例ですね。この手のキャラはメインヒロイン群に入っており、さらに精神的な位置が非常に近いというパターンがほとんどですね。
 で、サブキャラ群にありながら主人公と精神的な位置が近い、というキャラはどのようなものになるかというと、これが先の『オリバー・ツイスト』に出てきたような主人公が苦しんでいるときに助けを差し伸べる存在、もしくは主人公が困ったときに相談相手に選ぶような存在が該当すると思います。
 ここで重要なのは、主人公が庇護される立場になる、ということです。精神的な距離こそ近いものの、高さは主人公のほうが低い。相手が年上だったり、特別に事情から精神的な優位性を持っていたりするわけです。
 しかし、そういった優位性はあくまで主人公側から判断できることであって、読者(視聴者)の視点からでは精神的な高低差は些細な問題に過ぎません。そのキャラについては、ただ主人公を庇護する存在、としか認識できない場合が非常に多い。『オリバー・ツイスト』にしても、主人公は十歳ですが、読み手としてはそれは主人公自身に対する印象を決定づける要素でしかなく、その情報が他のキャラに対する印象に結びつくことはないのです。

 つまり、メインヒロイン(笑)や存在感の強いサブキャラが生まれる理由は、読者から見て、主人公と該当キャラとの精神的な位置が見えない(見誤る)ことによるのではないか、と思うわけですよ。とくに、高低差は見えにくいものではないでしょうか。

 「ヒロインとは何ぞや」に適当な答えは、当然、読者から見たものでなければなりません。メインヒロイン群という立ち位置だけでは足りず、精神的な立ち位置だけではサブキャラがヒロイン“らしく”なるのみ。
 これを踏まえて、ヒロインは、メインヒロイン群に立つだけの関係性を持ち、精神的に主人公に寄り添っている存在であればいいんじゃないかと思います。メインヒロイン(笑)にならない為に、あるいはサブキャラが強くなりすぎない為に、主人公との適切な位置関係というものを見定めなければならないんでしょう。

 ちなみに『オリバー・ツイスト』は結構面白かったです。ディケンズは展開の波が良いですね。起伏がわかりやすくて。落とすときは徹底的に落として、上げて、また徹底的に落とすという展開が痛快です。おすすめ。

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